Bさん在宅の仕事が増えて、机に向かう時間が長くなりました。夕方になると腰のあたりが落ち着かなくて、座り直す回数が増えています。
椅子を選ぶとき、売り場で座った数十秒で分かることは多くありません。体の重さがどこにかかり、姿勢がどう変わるかは、座り続けてから形になって出てきます。
ハーマンミラーの「アーロンチェア」は、1994年に生まれた椅子です。そして2016年に、全体を作り直すのではなく3か所だけに手を入れました。手を入れた3か所は、どれも座ったときに体重と姿勢がどこにかかるかで決まっています。
しかくこの記事では、その3か所がどういう構造なのかを、ハーマンミラー公式サイトの記述と仕様表から説明します。ふだんの性能もひととおり見ていきます。
\A・B・Cのサイズから選ぶ/
座ったときに、体に起きること

アーロンチェアが手を入れた場所を見る前に、座るという動作そのものを整理します。
1. 骨盤が後ろに倒れる
立っているとき、人の背骨はゆるいS字を描きます。椅子に座ると骨盤が後ろに倒れ、そのS字がC字に近づきます。背もたれが背中の上のほうしか支えていない椅子では、骨盤の倒れを止めるものがありません。座面と背もたれの下側で何を支えるかが、ここに関わります。
2. 前かがみになると背もたれから体が離れる
キーボードを打つとき、手元の書類を見るとき、上半身は前に出ます。このとき背中は背もたれから離れるので、上半身の重さを腰で受けることになります。座面が水平のまま固定されている椅子では、前かがみの時間がそのまま腰にかかります。
しかくどちらも姿勢の話であって、感じ方の話ではありません。だから椅子の構造で変えられます。アーロンが2016年に手を入れた3か所を、順番に見ていきます。
体重のかかり方に合わせて、張りを8つに分ける

座面には上半身の重さの大部分がかかります。ただし、同じ1枚の面でもかかり方は一様ではありません。お尻が乗る中央と、太ももの裏が当たる縁では、力の向きも大きさも違います。
アーロンチェアの座面と背もたれに使われている張り素材がペリクルで、2016年に入ったのが「8Zペリクル」です。Zはゾーンの頭文字で、座面に4つ、背もたれに4つ、合わせて8つの区画に分け、区画ごとに張りの強さを変えてあります。
ハーマンミラーの説明では、張力は縁の部分がいちばん強く、体が接触する場所はより寛容になっています。縁が強く張っていれば座面の外形が保たれ、中央がゆるければ体の形に沿います。クッションの厚みではなく、張りの強さの配分だけで座面の形を決めているという作りです。
もうひとつ、構造上の特徴があります。アーロンチェアの座面と背もたれには発泡素材と布地が使われていません。張り素材そのものが座面であり、背もたれです。ハーマンミラーはこの作りについて、長時間座ることで熱と湿気がたまるという問題への答えだと説明しています。
しかく座面にクッションが入っていない椅子は、そう多くありません。厚みで沈ませるのではなく、張りの強さで支える。同じ「メッシュの椅子」でも、8つに分けているかどうかで作りが変わります。
腰と骨盤を、別々のパッドで支える

背もたれの裏側に付いているのが「ポスチャーフィットSL」です。特許を取っている仕組みで、調節できるパッドが2枚あります。下のパッドが背骨のいちばん下にある仙骨を安定させ、上のパッドが腰椎を支えます。
2枚に分かれていることに意味があります。前の章で見たとおり、背骨のS字が崩れる出発点は骨盤が後ろに倒れることです。腰のあたりだけを前から押すランバーサポートでは、その出発点に届きません。下で骨盤を止めて、上で腰を支える。役割を分けたのがSLです。
ハーマンミラーはこの状態を「立って胸を張り、骨盤が少し前傾するという、人体が最も堅固になる姿勢」と説明しています。座っているのに、立っているときに近い背骨の形を保つ、という考え方です。2枚のパッドは独立していて、体格に合わせて別々に動かせます。
Aさんいまの椅子に後付けのクッションを入れているのですが、それとは違うものですか?
しかく後付けのクッションは腰のあたりを前から押すものが多いので、骨盤そのものを止める役目は持っていません。まずは下のパッドで骨盤の位置を決めて、そのあとで上のパッドを腰に合わせる。この順番で触っていただくと決まりやすいです。
\腰と骨盤を支えるポスチャーフィットSL/
前かがみから後ろまで、ひと続きで倒れる

アーロンチェアの傾く仕組みには「ハーモニック2チルト」という名前が付いています。前かがみの姿勢から後ろに倒した姿勢までを、途中で引っかからずにつなぐための機構です。前の章の2つめ、前かがみで背もたれから体が離れることに対応する部分です。
操作は3つに分かれています。ひとつめがシートアングル調整で、座面を水平から5度まで前に傾けられます。前かがみになったときに座面ごと前を向くので、背もたれから体が完全に離れる形になりません。
ふたつめがチルトリミッターで、倒れる範囲そのものを決めます。作業に集中する時間は浅い位置で止め、休むときは広く使う、という分け方ができます。みっつめがチルトテンションで、倒すときの重さを体格に合わせます。軽すぎると背を預けた瞬間に倒れ、重すぎるとそもそも倒れません。
ひとつ注意していただきたいのが、前に傾ける機能の扱いです。ハーマンミラー公式オンラインストアでは前傾チルトが標準装備になっています。付いていない仕様を希望する場合は、直営店か正規販売店への問い合わせが必要です。
ふだんの性能も、ひととおりそろっています

作り直された点は3つでしたが、ふだん使う部分も見ておきます。
まずサイズです。アーロンチェアはA(スモール)・B(ミディアム)・C(ラージ)の3サイズで作られています。背もたれの高さ、座面の幅、傾く機構までサイズごとに変えてあり、ベースの大きさも違います。1脚ですべての人に合わせるのではなく、3つに分けるという設計です。サイズの詳しい選び方はセイルチェアとの比較記事でも扱っています。
色は、フレームがグラファイト・ブラック・カーボン・ミネラルの4色に、新色のジャスパーとナイトフォールが加わりました。ベースとの組み合わせで選ぶ形になります。アームはフルアジャスタブルアームで、高さの調節範囲は約17.3cmから約27.4cm。アームパッドはビニールとレザーの2種類です。
キャスターは2種類あります。カーペット用は直径2.5インチの黒いナイロン製で、堅床とカーペットの兼用タイプにはブレーキ機能と振動を吸収する仕組みが入っています。フローリングで使う方は後者を選ぶことになります。
そして組み立ては不要です。箱から出してすぐ座れます。保証は12年で、一部のオフィスチェアに使われるガス圧シリンダーだけ2年です。ボディには海洋由来のプラスチックが使われています。直営店では体格に合わせて調整してもらえるパーソナルフィッティングも用意されています。
しかくじつはいま、シリンダーの色が全品番でシルバーからブラックへ切り替わっている途中です。写真がシルバーでも黒が届くことがあります。中古を見るときの年式の手がかりにもなります。
アーロンチェアのスペック

| 項目 | A スモール | B ミディアム | C ラージ |
|---|---|---|---|
| 身長の目安 | 約142〜163cm | 約157〜183cm | 約178〜198cm |
| 全高 | 978mm | 1041mm | 1092mm |
| 幅 | 654mm | 686mm | 718mm |
| 奥行 | 406mm | 425mm | 470mm |
| 座面高 | 375〜483mm | 406〜521mm | 406〜521mm |
| 重量 | 18.1kg | 18.6kg | 19.5kg |
| 耐荷重(寸法欄) | 136kg | 159kg | 181kg |
| 保証 | 12年(ガス圧シリンダーは2年) | ||
| 組立 | 不要 | ||
| 梱包外寸 | 700×700×1040mm(梱包重量 約18kg) | ||
耐荷重について、ひとつお伝えしておきたいことがあります。ハーマンミラー公式サイトの中で、書き方が3通りあります。上の表に入れた寸法欄の数字がA136kg・B159kg・C181kg、製品概要欄が136〜159kg、サイズの選び方の注記が「Aサイズは体重135kgまで、BサイズとCサイズは体重159kgまで」です。前者は椅子の構造としての耐荷重、後者は適合する方の体重の目安と読むのが自然ですが、上限に近い方はご注文前に販売店へご確認ください。
買う前にいちばん確認していただきたいのは梱包外寸の700×700×1040mmです。組み立て済みの状態で届くので、玄関から部屋までの通り道と、階段や踊り場の幅を先に測っておくと安心です。重量は約18kgあります。
型番・参考価格

型番はAER1A・AER1B・AER1Cで始まります。数字の1のあとに来るアルファベットがサイズで、そのあとに続く記号の並びで、フレームの色・ベースの色・アーム・キャスター・バックサポートが決まります。同じ「アーロンチェア」でも型番が長く違って見えるのは、この仕様の組み合わせが型番に入っているためです。
| 買い方 | 納期の目安 | 参考価格 |
|---|---|---|
| 通常在庫品 | 在庫があればすぐ | 約26万円台後半〜 |
| 受注生産 | 約17週間前後 | 約28万〜36万円前後 |
価格は仕様で動きます。ここが意外と知られていないところなのですが、同じサイズ・同じフル装備でも、フレームとベースの色を変えるだけで9万円ほど変わります。グラファイトのようにいちばん多く流通している組み合わせがおよそ26万円台後半、ポリッシュドアルミのベースにレザーのアームパッドまで上げるとおよそ36万円前後です。
予算を決めてから選ぶなら、先に色を決めてしまうのが早いです。サイズと装備を決めたあとで色を見ると、そこから数万円動いて計算し直すことになります。
\仕様で価格が変わります/
よくある質問 Q&A

A・B・Cのサイズはどう選べばいいですか
公式が出している身長の目安は、Aが約142〜163cm、Bが約157〜183cm、Cが約178〜198cmです。境目が重なっているので、163cmの方はAとBのどちらにも当てはまります。重なる範囲に入る方は、直営店で両方に座って決めるのが確実です。
体重の上限はどのくらいですか
公式サイトの中で3通りの書き方があります。サイズの選び方の注記では、Aサイズが135kgまで、BサイズとCサイズが159kgまでと案内されています。寸法欄にはCサイズ181kgという数字も出ていますが、こちらは椅子の構造としての耐荷重です。上限に近い方は、ご注文前に販売店へご確認ください。
組み立ては必要ですか
不要です。組み立て済みの状態で届くので、箱から出せばそのまま座れます。そのぶん梱包が大きく、700×700×1040mm・約18kgあります。搬入経路を先に測っておいてください。
どこで買うのがいいですか
12年保証を受けられるのは正規のルートで買ったものです。ハーマンミラーは公式サイトに並行輸入品への注意を出しています。保証を申請するときは座面の下にある製造ラベルの写真が要るので、購入後はラベルの位置だけ確認しておくと安心です。
まとめ|ハーマンミラー アーロンチェアはこんな1脚

アーロンチェアは、座ったときに体重と姿勢がどこにかかるかを起点に、3か所を作り直した椅子です。
座面と背もたれの張りを8つに分けたのが8Zペリクル。骨盤が後ろに倒れることに対して、仙骨と腰椎を別々のパッドで支えるのがポスチャーフィットSL。前かがみで背もたれから体が離れることに対して、座面ごと5度まで前に傾けられるのがハーモニック2チルト。そのうえで3サイズから体格に合わせて選べて、保証は12年(ガス圧シリンダーは2年)です。
買う前に見ていただきたいのは、梱包外寸700×700×1040mm・約18kgの搬入経路と、保証が正規のルートに限られることの2つです。注文のときに決めるのは、色・サイズ・バックサポート・アーム・キャスターの5つになります。
しかく座る時間が短ければ、ここまでの調整幅は使い切れません。1日に何時間も座り、その椅子と10年以上つきあう。そういう使い方を前提に作られた1脚です。
\体格に近い1サイズを選ぶ/



コメント